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吉岡ひろ子のエッセイ「お元気ですか」

映画「約束」

「映画」といっても、これは架空の物語ではありません。

51年間、獄中から無実を訴え続けている死刑囚――奥西勝さん87歳の映画です。

52年前に、三重県の名張市の小さな集落で起きた、毒入り葡萄酒によって、5人の女性が死亡した事件。

地裁で無実だったにも関わらず、5年後には死刑が言い渡されました。

死刑執行は当日の朝に知らされるために、毎日廊下の足音におびえながら過ごします。昼食が配られると、これで明日の朝まで命が永らえた、とほっとする――。

半世紀の間に関わった裁判官50人ですが、「新証拠は無実を言い渡す明らかな証拠」と、再審を認めた裁判長は翌年「退職」、「再審棄却」した裁判長は「栄転」しているという驚愕の事実――。

一人で無実を訴える奥西勝さんに、「あなたの力になりたい」と第三者からの温かい言葉をかけたのが、えん罪の救援活動をしている国民救援会でした。

主演の仲代達矢さんは「役者人生の集大成」といい、母親役の樹木希林さんは「役者としてもう一度生き返った気がする」と話しています。

映画が終わり会場が明るくなって、お隣の女性とお互い赤く腫らした目が合いました。

人生を翻弄され、無実の叫びを司法に切り捨てられてきた奥西勝さん、今は八王子医療刑務所で重篤な病状ですが、「こんなになっても支援を続けてくれてありがとう」という奥西さんに支援の輪を―!

(06月11日記)

「清田区新聞」14年06月15日付より