昨年の夏に急逝した米倉斉加年さんの追悼公演を観てきました。
米倉さんが「絵のない絵本」の劇化を準備中に亡くなったのを受けて特別編成されたキャスト・スタッフによる公演でした。
お婆さんが、孫によせた手紙とアンデルセンの「絵のない絵本」を残して旅にでます。
「絵のない絵本」は、屋根裏部屋で暮らす貧しい画家が、訪れる月によって寂しさを慰められ――それを画家が書き留めたかたちになっている物語ですが、劇では絵本と現実が交錯して描かれます。
戦争によって命を奪われた身近な人たちの思いが、じんわりとそして強烈に伝わってきました。
「アンデルセン」と言って私が一番先に思い描くのは「マッチ売りの少女」です。
大晦日の夜、寒空で売れ残ったマッチに火をつけます。マッチの炎とともに、ごちそうなどの幻影が現われ消える。最後の火も消え、少女は幸せそうに微笑み死んでいた――。
旅行から帰ったお婆さん、「デンマークは『マッチ売りの少女』を作らないようにしているんですって――」
「マッチ売りの少女」は貧しかった母親をモデルに作ったと言われています。
デンマークの「子どもの貧困率」(2012)は6.5%。日本の半分以下――。
(10月28日記)